ラオスのサナエトンボの分類
The purpose of opening this blog is to disclose information about our Lao dragonflies and to assist researchers interested in dragonflies in Laos and the Indochina Peninsula.
2022年1月30日日曜日
ラオスのサナエトンボ Lao Gomphidae (1)
2022年1月24日月曜日
Morphological observation of the larvae in Macromia vangviengensis and unca
Macromia vangviengeisisとM. unca の幼虫は他のMacromia属と比較して非常に変わった形態をしているので、ここで一度詳しく調べてみたいと思います。この2種類のMacromiaのうちvangviengensisiはインドシナ半島北部~中部に分布していて、uncaはさらに中国南部まで広く分布しています。しかし、ラオスにおいてuncaはなかなか得難く、中部 Lak Saoからベトナム国境にかけての岩がゴロゴロした渓流地帯からしか記録がありません。これに対してvangviengensis は南部を除いて中部~北部の標高400~1200m の中流域から上流にかけての、砂地の川に多く見られます。この2種は幼虫の形態が非常によく似ていて、また他のMacromia 属とは明らかに異なる形態から、両者は分類学的に非常に近いものと考えられます。
M. vangvienensis central Laos 生息地の景観 vanviengensis 's Habitat landscape near PhonsavanM. unca 成虫の出現は早く、4月20日頃にはすでに成熟したオスが割合川幅のある渓流(写真参照)を行きつ戻りつパトロールをします。しかし個体数は極めて少なく、未だ追加記録を上げれません。幼虫は全体にずんぐりとしており、vangviengensisと大きさがやや大きいぐらいでしか区別がつきません。幼虫の大きな特徴は頭部、腹部が他の Macromia に比較して極めて平たく、特に腹部下面は扁平です。さらに後脚が著しく短いことことも他種と大きく異なる点です。幼虫を採取すると両種共に指に体を密着させてきます。こうした行動は他の Macromia 属には見られない行動です。脚が短く、体全体がが薄く扁平な形態がこの行動を可能にしていると思います。確認こそしていませんが、多分、この2種の幼虫は水中の岩や石の裏に体を密着させて生活しているものと考えられます。ただ vangviengensis の方は、砂地でも見られ、他の Macromia と共に網に入ります。
2022年1月19日水曜日
Laos のCaliphaea属のまとめ
Laos の Caliphaea 属について
Caliphaea sp. 29/4/2004 Phu San, Xiangkhouang
Caliphaea 属の種類と分布
Caliphaea angka Hämäläinen, 2003 Distribution: Thailand, China
Caliphaea confusa Hagen, 1859 Distribution: India, Bhutan, Nepal, Myanmar, China, Vietnam、Laos*
Caliphaea consimilis McLachlan, 1894 Distribution: Endemic to China
Caliphaea hermannkunzi Zhang & Hämäläinen, 2020 Distribution: Endemic to China
Caliphaea nitens Navás, 1934 Distribution: Endemic to China
Caliphaea thailandica Asahina, 1976 Distribution: Thailand, Laos, Vietnam, China
*Laos (yokoi, 2003, Aeschna 40: 33-35. This record will be deleted on this page.)
カワトンボ科の1属、Caliphaea 属は現在、上に示したとおり6種がインド北部からインドシナ、そして中国に知られていますが、今後さらに新種が増えるものと予想されます。現在6種全てが中国に分布していて、うち3種が中国固有種であることも興味深く思います。いずれの地でもその生息地は主に標高1500~2500mの樹林帯を流れる渓流に見られ、ラオスでも分布は中部高原のシェンクワン周辺の山岳地帯に限られています。カワトンボ科にしては非常に華奢な体で、飛び方も弱々しいトンボです。2014年にラオス産として5種をリストアップしましたが、うち3種は未記載種と考えられ、今回、それ以降の知見も含めラオスのCaliphaea属について整理したいと思います。ラオス産の内、C. cofusaについては横井(2003)でラオス北部Sam Nuaから初記録として報告しましたが、同種はその後、フォンサバン北東 Ban Tha からも得られ、これらの産地をリスト (A List of Lao Dragonflies, 六本脚で売っています)でマッピングしてあります。
このラオス産 C. confusa は、採集当時テネラルな個体で、標本は他の興味深いトンボと共に当時ヘルシンキ大学のHamlainen博士にお送りして調べていただきました。そして博士からはconfusa グループに含まれるものの、若干confusaとは異なる部分があると連絡を受けていました。最近、Hamalainen博士から、ベトナムのPhan Quoc博士と共同でベトナムで得られているCaliphaea を新種として記載したいが、以前送ってもらっていたラオスの種(私は勝手にconfusa とした標本)も同じであると結論したので、リストにプロットしてある、もう一方の confusa は本当の confusa なのか、あるいは送ってもらった標本と同じなのか、教えてほしいと連絡が来ました。
そこで、今回は良い機会なので、あらためてラオスの Caliphaea 属を調べなおしてみようと思いました。現在、手元にあるオスの標本はさほど多くありません。しかしその多くが尾部付属器に大量の分泌物が付着していて(図1, 赤矢印)、これを取り除くのが面倒臭くなって、放置していました。この分泌液の塊をどうやって除去するか、針で突いてみましたが、硬くて本体を痛めそうなので、何らかの液体処理で対応することにしました。
図1 Caliphaea sp. 腹側から見たもの. 下部付属器に大量の分泌物が!
体液の場合、多くはタンパク質と多糖類だろうと思いますので、酸かアルカリの溶液に付けてみます。手に入りやすい物に百均で購入できるクエン酸と過炭酸ソーダ(図2)がありましたので、これで試してみます。クエン酸を水に溶かし、pH2程度の溶液を用意して、オスの尾部を半日浸しました。その結果、ものの見事にクリーンアップされました(図3)。(なお、カビが発生したものはクエン酸では除去できず、この場合は過炭酸ソーダ液で処理するとほぼ完全に除去できました。)最も尾部の白いワックスや体内の組織も一緒に溶出してしましましたが、観察には問題ありません。
こうして準備したラオス産の Caliphaea を見ていくと、おおよそ2,3のグループに分けることができました。そのうち一つはすでに報告した C. thailandica (図4-8)です。残るグループはかなり厄介ですが、ラオス産のconfusaとしたものについては前述したようにベトナムから記載される予定の種と一致することが分かりました。したがって、現時点でラオス産のconfusaは未記録となりました。
まずは、酷似する種類のなかで、特徴的な形態を示すthailandicaを見てみます。
図4 Caliphaea thailandica
つづく( 19/01/2020記)
Five species of Caliphaea were recorded from Laos. Among them, it was confirmed that Lao confusa was the new species recently described from Vietnam. On this page, I will examine in detail 3 of the 5 species that were unidentified.
20/01/2020投稿
前回写真で示したC. thailandica は、Caliphaea属中最も尾部付属器に特徴があって、その棒状の下部付属器の形態から他種との識別は簡単です。現在、このような特徴を持つ種は本種のみとなっています。この種はタイ北部からラオス中部、ベトナム北部、さらに中国南部に分布していて、生息地はいずれの地でも標高2,000m前後の渓流にあります。詳しい生態については報告が無いと思われます。
次に、ラオスのリストの中で触れた sp.2 ( P9, Plt.4, Fig.24) を図示します(図9-13)。
図9 Caliphaea sp. 2図12 genitalia in ventral
ボロベン高原の4月下旬のトンボ (1. Megalogomphus)
強者現る 2025年4月下旬に南ラオスの調査を久しぶりにおこないました。今回は仙台の若いT君が初めて参戦してくれました。私たちからみれば、息子の様なまだ20代の若者なのですが、どうしてどうして、これがこれまで見たことのないような、なかなかの強者で、その飛び抜けた知識と行動力さ...
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