これまでラオスのトンボを求めて、長年ラオスの山々を歩き回って多くのトンボに出会うことができました。2014年に出したリストでは計352種の記録でしたが、最近その後の記録を整理したところ、さらに60種(新種・不明種を含む)増えていることが分かりました。前リストの修正が少しあるにせよ、現在、ラオスのトンボは400種以上に達していることが分かりました。
ラオスには karubei というコソボソヤンマがいます。ラオス中部ラクサオがタイプロカリィティなのですが、残念ながら野外で成虫は一度も見たことがありません(羽化個体で記載しました)。ラクサオに訪れた時はいつも注意していたのですが、全くその気配すらありませんでした。このトンボは中国南部からベトナム北部にかけて、発生期には普通に見られるとのことでしたから、当然ラオスにもたくさん居るのだろうと考えていました。
しかし、「いなーい!」のです。時期を変え、場所を変えても、何回やっても全く同じ。なぜヤゴだけしかいないのか分かりません。この karubei は中国南部からインドシナ半島中部以北が分布地だと思っていたら、最近韓国からも記録されていて、韓国に karubei を実際に採りに行った友人の話では♀は午後になると飛び出すが、♂はあたりが真っ暗にならないと飛ばないそうです。ライトを点けて採集している写真を見せてもらいました。
ラオスでも真っ暗になってから飛ぶ?まさかそんなことはないでしょう 🤔
9月下旬に懲りもせず、再び karubei を求めて私、トシちゃんそして宮畑さんの3人でラオス中部ラクサオに行ってみました。ところが、直前に台風11号がベトナム北部を直撃して、ラオスもまたこれでもかという様に大雨、洪水が発生しました。メコン川はオーバーフロウし、流れ込む支流は軒並み大氾濫をおこしていました「おいおい、何だよこれ!」。
今回、ラクサオではこれまでとは異なる場所で探索を予定していたのですが、増水で全く近寄ることが出来ず、またもやコシボソヤンマには出会えませんでした。よほど嫌われているようです。しかたなく近くの沼や山道沿いの小川などでトンボを探し、お茶を濁しました。ただ、この中でマクロミアのペアをトシちゃんが採りました。良く見ると一見 urania (ダ足! 従来ヒナヤマトンボ Macromia urania と称するトンボは北ベトナム原産の urania とまったく異なる種であると私は考えています。これをやるか今躊躇してますが。やるとなると、ヒナヤマトンボを改めて新種として記載することになりますので、どうするか、、、)のように見えますが、前胸の明瞭な黄色の縦状紋が基部に痕跡程度しかありません。urania を含む callope グループにはそのような種はありません(下図)。その他の部分は全てこのグループに合致します。要検討の種です。時期を変えただけで何が採れるか分からないのがラオスの面白さでもあります。
その後も天気は回復せず、この地を離れる前に、ベトナム国境近くの国道8号沿いの小渓流でトンボを探しました。
要注意の Macromia、 前胸の横紋は痕跡程度、顔面は褐色
この渓流は時期を変えて、何回か来ているのですが、天気に恵まれたことは殆んどありません。今回も小雨、「何も居ねーよ」と半ばあきらめムードで沢に分け入りました。足元からヒルが這い上がってきます。先行していた宮畑さんが「このトンボ何にー」?と叫んでいます。期待もせず行って見ると、「お!Agriomorpha fusca や!」最近、感嘆詞が宮畑さんの影響で関西弁になってしまいました。このトンボはベトナム北部、中国南部に見られる普通種ですが、ラオスでは初記録です。さらに Devadatta cyanocephala も見られるなど、ここではこれまで全く見られなかったトンボが見つかりました。やっぱり時期なのかなあ?
Devadatta cyanocephala ♂(宮畑年弘撮影)
Coeliccia pyriformis (C. acco) (宮畑年弘撮影)
Coeliccia scutellum (宮畑年弘撮影)
Coeliccia pyriformis (C. acco) (宮畑年弘撮影)
Coeliccia scutellum (宮畑年弘撮影)
つづく。次回はオニヤンマです。
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