乾燥著しいボロベン高原で探索できた河川や池沼はあまりありませんでしたが、それでも先の Megalogomphus に見られるような、この地域特有のトンボを確認することができました。
T君が帰国後、早速作成したリストではこの地域だけで50種以上を確認したようです。私たちが主に採集や観察を行ったのは、ボロベン高原中央部のパクソンからセコン県に向かう国道沿いに流れるナム・サイとその周辺です。この川はタンニンが多い透明度の高い赤褐色の川だったのですが、最近、周辺部の広域な森林伐採とコーヒーや野菜のプランテーション開発が進んだせいか、茶色の濁った川に変わってしまいました。かつての鬱蒼と木々が川面を覆い、苔むした畦畔などの面影はすでになく、無数に見られた Prodasineura doisuthepenensis は姿を消し、さらに Aristocypha fulgipennis も個体数が激減していました。
しかし、わずかに残された樹林帯の中を流れる流畔には個体数こそ少なかったもののAsiagomphus、Nihonogmphus、Ophiogomphus、Gomphidia など数々のサナエ類をはじめ Periaeschna やPhiloganga なども見つかり、この地の豊かなトンボ相を彷彿とさせました。
今回、ボロベン高原ではハッチョウトンボの産地やアオイトトンボの探索を予定していましたが、思わぬ乾季の影響で生息地の環境が悪く、調査が出来ずに終わってしまいました。その反面、 Houayxay地区のサイ川とその支流にはまだまだ、多くの流水性トンボが生息していることを知ることが出来ました。特にT君による探索力には我々老人会は舌を巻きました。彼の確認記録から推察すれば、恐らくこの時期にサナエトンボだけでも20種以上生息しているものと予想されます。
なかなか簡単に訪れることができない場所ですが、この地域のトンボ相の解明を今後も続けられたらと思いました。
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