2024年2月25日日曜日

Laos の Devadatta 属(2)(パソコンでご覧ください。文字化け、行ずれが起きます)

argyoides グループ

 Devadatta 属の中では最もポピュラー(もちろんほとんど得られていない種も多い)な形態をしている種群で、主にボルネオ島~インドシナ半島南部に分布しています。頭部の後頭楯は金属光沢を呈することが多く、体色はダークブラウン~黒、胸部側面に明瞭な細い筋状の淡いラインが第1、2側縫線上に明瞭に現れます。腹部の3~7節には明瞭な明るい茶色の斑紋が見られ、翅の先端はつま黒になる特徴があります。                                      

                                       Devadatta cyanocephala ラオス中部 Thatom 産

 ラオスでこのグループに属するものはラオス中部~南部から記録されている cyanocephala 1 種のみが記録されています。このほかに Devadatta 属(1)のページで触れたとおり multinervosa も属する可能性があるかも知れません(この辺の判断はむずかしいですね。タイプの写真から第3腹節背面に淡い斑紋らしいものが認められることから、もしかするとこれは別属かも?)。
 このグループも生息地は低山地~山岳地域の細く勾配のきつい沢に見られ、薄暗い谷合の突き出た樹木の枝先に止まっているのが観察されます。決して植物の葉には止まらないようです。
 
3 glaucinotata グループ

 最後に glaucinotata グループです。特徴は前のブログページに書いてありますので、割愛します。D. glaucinotata はラオス中部、今では欧米人に人気がある観光地であるVangvieng(バンビエン)から国道13号を更に30分ほど車で北に行ったPatang(バタン)付近から得られています。国道13号から Nam Song(ソン川)に沿にそって脇道を進みますと、いくつかの沢と交差します。標高は350~400m であまり高くはありませんが、多くの珍しいトンボがそれぞれの沢に見られました。この流域ではこの glaucinotata の他に、これも非常にめずらしいハナダカトンボの仲間、Rhinocypha peitho(これまでに Patang でタイプの1♂、中部ラオスの2地点からそれぞれ1♂ と1♀しか得られていない)が採れています。
 glaucinotata とは別に、異なる2種が中東部のアンナン山脈西麓から得られていて、その胸部の特徴ある斑紋からこのグループに属すると考えられます。 
                    
               Devadatta
spラオス中部 Thatom 産

               
Devadatta spラオス中部 Mok 産 

 Thatom 産の個体はやや若く、採集した時は胸部の色が鮮やかなライトブルーをしていて、とてもこれがあの地味な Devadatta とは思えないほどでした。しかし、標本にするとたちまち灰色に変化してしまいました。成熟すると胸部は青灰色に変化していくのかも知れません。
 一方、Mok 産は当初、glaucinotata だと思っていましたが、後日、改めて見てみると、胸部斑紋や尾部付属器の形がかなり異なることから別種であることの可能性が高いと思います。しかし、いずれも1個体しか得られていないため、さらに標本が集まらないと明確なことは言えません。
 
 ベトナムとは違って、cyanocephala を除くと、ラオスでのこの種のトンボを採集できる機会はほとんどありません。そして不思議なことに、なぜかほとんど単独でしか巡り合うことが出来ていません。近年の猛烈な開発はラオスも例外ではなく、中国雲南省の省都昆明からビエンチャンまで開通した高速鉄道の建設で、Patang 周辺の環境は完全に変わってしまい、昔の面影は現在ありませんでした。
 種の多様性条約締結後、それぞれの国々での昆虫採集は厳しくなる一方で、何が居るのか分からないうちに生息地そのものが大規模開発で失われることは、何ともやりきれない気持ちになります。

 








 
 

 

                      

                    
 


        


     

Phu Sumsum の Anotogaster

Phu Sumsum   のオニヤンマ  先のページでも触れましたが、ラオスのオニヤンマはなかなか得難いトンボです。これまで、 gigantica , gregoryi , klossi  1) そして chaoi  2) の記録がありますが、得られた個体は僅かで、生息地も数...