2021年9月2日木曜日

The genus Epophthalmia Burmeister, 1839 in Laos

 最新のラオスのオオヤマトンボ属

 オオヤマトンボ属はインドから東南アジアさらに、東アジアに6種が知られています。「A  List of Lao Dragonflies 」では Epophthalmia elegansfrontalis および vittigera の3種をリストアップしました。2019年に、私たちは新たにvittata を追加記録しましたので、現時点でラオスからは4種が記録されたことになります。Paulson&Schorr (2021)よりオオヤマトンボ属をチェックリストを下に示します。
Epophthalmia elegans (Brauer, 1865)
            Macromia elegans Brauer, 1865 
Epophthalmia frontalis Selys, 1871
            Syn Macromia binocellata Fraser, 1924
            Syn Epopththalmia frontalis malabarensis Fraser, 1935
Epophthalmia kuani Jiang, 1998
Epophthalmia vittata Burmeister, 1839
            Syn Epophthalmia cyanocephala Hagen, 1867
            Syn Epophthalmia vittata sundana Lieftinck, 1931
            Syn Epophthalmia bannaensis Zha & Jiang, 2010
Epophthalmia vittigera (Rambur, 1842)
            Macromia vittigera Rambur, 1842
 
 こうやってみると結構、シノニムが多いですね。Paulsonらのリストでは亜種を認めないのでこうしてシノニム整理されてしまう種が出てきます。このリストにあるkuani (赤字)は中国江蘇省から記録されているのですが、疑問種として中国のリストから除外する研究者もいます。その記載文を見る限り、しっかり記述されていて、図も問題ないと思うのですが。ただこの種は、ほとんどelegansと見分けが付かず、さらに採集地は elegans のタイプロカリティ、上海に隣接しており、私はシノニムの処置が妥当だと思います。
 ラオスのEpophthalmia 属は全てが池沼に住み、elegans のみがは山地性で、他のfrontalisvittigera はごくごく平地の池沼に普通に見られます。vittata は幾分山間の池沼が生息地で、なぜか渓流を良く飛びます。ヴィエンチャン郊外の山間の渓流にはムモンギンヤンマが生息していて、こうした渓流を本種が次々に下流から上がって来ます。
 一方、elegans はラオス国内でも主に中部以北の山地帯及び南部の高地に見られ、一見日本産と形態や斑紋が異なるようには見えませんが、ラオス国内の産地毎に並べてみると、各地域ごとに形態に結構特徴のあることが分かります。以下に各地域ごとの標本を並べてみます。

Four species, elegansfrontalis、vittigera and vittata are currently recorded from Laos.  On this page I examine elegans mutations recorded from the Northern Mountains and Southern Plateaus of Laos.  The lower position of the photos, the more southern the habitat.  In addition, Epophthalmia kuani Jiang, 1998 is very similar to elegans, and there is a possibility of synonym because the type locality is adjacent to elegans (Shanghai). 
                     
 
尾部付属器と副生殖器の比較
Habitat-specific hamulus posterioris and Anal appendages

 一見、ほとんど同じように見えますが、尾部付属器の下部付属器の長さにはいろいろあって、また背面からの上付属器も若干、変異があるようにも見えます。さらに副生殖器の形状、特に先端の鈎の形などには違いが見られます(アップできる容量の関係で、精緻さに欠ける解像度で申し訳ありませんが)。
 北部のXamnua の個体が最も下付属器が上付属器より長く、背面から見た上付属器も日本産のものに似ています。しかし、中部のBantha や Xankhuwanのものは下部付属器がそれほど長くなく、上付属器は先端まで幅広であることが分かります。一方、中等部 Laksao はその中間の形態で、さらに南部 Sekong のものは下部付属器はわずかに長く、上付属器は先端から半分がよりシャープで肉薄であることが分かります。また、第10節背面の大きな突起の形状も北部産や日本産(中国産も)のものとは異なります。
 副生殖器はこの写真からでは何とも言えませんね。ただ、日本、Xumnua および Bantha 産は良く似ていますが、Xankhuwan、Laksao および Sekong のものは互いに共通点が多いように思います。
 elegans はロシアから朝鮮半島、中国、台湾、ラオス、ベトナムそしてフィリッピンとかなり広大な地域分布しています(津田、2000)。ラオス国内でも変異が大きいのに、これだけ広く分布するのに1種なのでしょうか?疑問が残ります。ラオス産で見れば、中東部から南部にかけての地域の elegans(一応 elegansとした)は今後、さらに詳細に検討の余地があると思われました。

It was found that elegans from northern Laos are similar to those from Japan, but those from central and southern Laos are slightly different. Since elegans are widely distributed from South Asia to East and Southeast Asia, it will be necessary to know the range of variation in each region. 
















Phu Sumsum の Anotogaster

Phu Sumsum   のオニヤンマ  先のページでも触れましたが、ラオスのオニヤンマはなかなか得難いトンボです。これまで、 gigantica , gregoryi , klossi  1) そして chaoi  2) の記録がありますが、得られた個体は僅かで、生息地も数...